.1999 The Insecuriy of International Money in Japanese

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「国際金融の不安定」

インターアクション・カウンシル専門家会議報告書


名誉議長:ヘルムート・シュミット
議長:マルコム・フレーザー

1999年4月9−10日

ハーバード大学、ジョン・
F. ケネディ・スクール




現 状

 グローバル金融市場は近年、未曾有の国際資本流動の増大と大幅な為替レート変動の激化を経験している。こうした不安定な状況が多くの開発途上諸国に実質的な経済危機をもたらし、そうした危機はグローバルな金融ネットワーク全体にリスクを負わせている。 政治指導者には、将来このようなリスクがより良く理解され、より効果的に対処されることを保証する責任がある。

 世界の金融市場で現在みられる問題には多くの原因がある。国内的なミス管理、過大評価された為替レート、多くの新興市場における短期外貨建て融資への過剰な依存などが主な要因となった。しかしこれらの問題は、粗末な貸付慣習と短期資本流出入の激動によって一層悪化している。技術変化と厳しい競争は、先進工業諸国の安全地帯に収益を回収すべく開発途上市場において高い利回りを求めさせる行動に民間の金融機関を走らせてきた。

 金融監督者は、一般的に国境内の枠組みの中で操作しているが、財貨・サービスおよび資本の移動は急速に自由化され、国際的な統合も進んでいる。国際金融市場を有効に管理する国際機関は存在せず、国内の所管官庁間でも十分な調整がとられていない。その結果は危険な空白である。

 技術、国際統合、不十分な規制が相俟って為替レートの変動に結びつくと、資金の不安定な流出入が時に大きな混乱を招きうる状況を創出する。為替レートへの依存度が高い開放経済下の開発途上諸国は、急激に逆行する短期資本の移動に脆い。このような資本移動は、しばしば開発途上諸国の政策ミスによって拍車がかけられているが、主要通貨間の為替レートの変動によっても激化している。

 

為替レートの安定:選択肢

 世界の主要通貨間の交換レートが不安定になると、小規模、自由かつ多様な経済にとって持続可能な為替レート政策を採用することは困難となり、不可能ともなる。改善された金融構造がシステムの強さを増すとしても、為替レートの極端な変動は重大な金融衝撃の要因となりうる。為替レートの調整を大々的に改善することが不可欠である。以下に挙げる提言は、今後の議論や協議の基盤となるはずである。

  • 為替レートの安定には新興市場および先進工業諸国の通貨に対する異なるアプローチが必要とされる。中期的な調整には弾力性が不可欠だが、この短期的混乱と不確実性の抑制を目的とすべきである。
  • 米ドルおよびユーロが共に世界の金融市場の大半を占めることになることを勘案すると、大西洋両岸の為替レートの安定は世界の安定にとって極めて重要である。アジア地域における円の重要性に鑑みると、対ドルおよび対ユーロの円レートの安定も同様に不可欠である。
  • 主要な世界通貨の代表者たちは、自国の基本的政策目標とさらなる為替レート安定のための努力への協議・強調に合意すべきである。均衡に向けて国家がより積極的に市場介入を推進するシステムを強化することも考慮されねばならない。
  • その他の諸国、とりわけ小規模な開放経済諸国は、自ら自国の為替レート体制 ― すべての国で常時適切なシステムなどひとつとしてない ― を選択すべきである。しかしながらその目的は、為替の不安定さを緩和し、投資を奨励し、変化する環境に適応するために必要な柔軟性を備えることなのである。技術援助は、最も適切な体制を選択し維持している国に供与されるべきである。

 

改善された金融インフラストラクチャー

 国際金融システムはさらに強化されるべきであり、この目標は国際金融取引のより有効な管理によって推進されうる。協調のための国際的枠組みとその結果である慎重な監督の同一化は、貸手と借手側の無謀なリスクテ−キングを思いとどまらせると同時に、十分な国際流動性の創出にとっての前提条件でもある。本年2月にG7が創設した金融安定フォーラムはその意味で価値ある起点となった。しかし、この枠組みに関与できるのはG7諸国のみに限定されてはならない。その他の諸国、とりわけ開発途上諸国および経済が過渡期にある諸国も議論に参加させるべきである。

 バーゼル委員会での実績を基盤として、国際的な監督当局を設立すべきである。そのような監督当局は、金融規制に最良の実行基準を設け、それらの基準が遵守されているか否かを監督し、それを無視することから生じるリスクを制限するメカニズムを調整すべきである。慎重な監督に加え、開示、市場管理、国際的合併に対する国際基準の必要性にも注目すべきである。

 慎重な規制において最善を尽くすには、政治的コミットメントのみならず技術的専門性が必要とされる。そのためにも開発途上諸国の技術能力向上を支援する国際機関の役割を拡大させる必要がある。

 国際金融市場において秩序を維持する重要な手段として、短期および長期の資本の流出入間に均衡を保つことが挙げられる。同等に重要なのが、国家の金融開発における段階と資本が市場に流出入する速度に一貫性があるということである。特定の状況においては、いくつかの新興市場が短期的な資本の流入に制限を加え、国民の資本の海外逃避を阻止することは適切かもしれない。

 IMF は、適切な条件の下に、金融危機のただ中にある国家への援助を続けるべきである。IMF は、そのような貸付のための必要条件を立案する際に、対象国の歴史と個々の経済状況を特別に考慮に入れるべきである。IMF 融資は、長期的な開発問題に責任を負う世界銀行の妨害をしてはならない。IMF の資金財源は、準備金を通じて危機回避のための手段として強化されるべきである。国際諸機関は各々の役割を果たせるだけの十分な資金拠出を必要としている。

 いかなる流動性の取り決めにおいても、IMF は貸手の責任を放免させないように注意を払うべきである。IMF には短期的な資本移動(デリバティブ・ポジションを含む)を監視するに十分な能力が供与されるべきである。

 特定の緊急状態において、流動性支援の形態としてある限定された期間のみSDR を創出することをIMF に対し認可することは適切かもしれない。このような臨時のSDR 発行は、危機に速やかに反応できるが、速やかに撤収されるべきである。しかし一般的には、IMF は民間部門の資本を国際市場に引き付ける触媒として機能すべきである。

 

本報告書は下記の専門家の進言を採り入れている。

  1. ムハマド・アル・ジョサール、サウジアラビア通貨庁副総裁
  2. グラハム・T・アリソン、ハーバード大学J.F.ケネディ・スクール、ダグラス・ディロン教授
  3. ジェフリー・カーマイケル、オーストラリア金融監督庁長官
  4. ステファン・コリジョン、ドイツ大蔵省
  5. リチャード・N・クーパー、ハーバード大学モーリッツ・ボアス国際経済学教授
  6. イートウェル卿(ストラットン・セイント・マーガレット)、ケンブリッジ、クイーンズ大学学長
  7. ジェフリー・A・フランケル、ブルッキングス研究所
  8. ベンジャミン・M・フリードマン、ハーバード大学ウィリアム・ジョセフ・マイヤー政治経済学教授
  9. イアン・ハーパー、メルボルン・ビジネス大学教授
  10. 加藤 隆、大蔵大臣特別顧問
  11. ポール・モントレー、フランス大蔵省
  12. ジョセフ・S・ナイ・ジュニア、ハーバード大学J.F.ケネディ・スクール校学長
  13. ダニ・ロドリック、ハーバード大学ラフィック・ハリリ国際政治経済学教授
  14. ステファン・ションベルク、ドイツ中央銀行国際局長
  15. 田谷禎三、大和総研常務理事
  16. ポール・A・ボルカー・ジュニア、元米国連邦準備制度理事会議長

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